ジョン ローレンス サリバン

デビュー作は、1着の美しいジャケットだった。

デザイナープロフィール

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ジョン ローレンス サリバンの、テーラードを軸としたシャープで優雅な服は、その高いクオリティと独自性が世界中のバイヤーから高い評価を受けている。2002年のデビュー以来、東京コレクションを経てパリで7回ショーを行い、今シーズンからロンドンへと発表の場を移した。デザイナーは柳川荒士。元プロボクサーという異色の経歴から、15年前のデビュー当初はかなり業界を騒がせた人物だ。ブランド名「ジョン ローレンス サリバン」も伝説のボクサーの名前にちなんでいる。

並々ならぬ素材へのこだわりから、生地はほとんどがオリジナル。もちろん、柄も織りも、時には糸も独自のものだ。使う生地に合わせてミリ単位でパターン修正を行なったり、凝った加工を施したりと高い技術が不可欠なので、生産は基本的には全て日本国内で行なっている。どこまでも緻密に細かく、コツコツと理想の服に向かって突き進む姿が印象的だ。多くのブランドが効率性のために既成の生地を使うことが多い中、ここまで素材と縫製にエネルギーを注ぐインディペンデントデザイナーは珍しい。

ブランド立ち上げ当初は、日本有数のウール産地である尾州に通い詰めたという。「尾州がなかったら、うちのブランドもなかった」。出来る限り多くの工場に足を運び、職人さんと話しをすることで新しい発見もあるそうだ。「昔はこういう生地があったんだけど今はないねえ」とか「こんな織り地があるけどどう?」など職人さんから教わるアイデアもあるそうだ。「シャツ生地(コットン)もウールの工場で作ってもらったりします。ウール用の織り機でシャツ生地を作ると、広幅でピシッと美しい生地ができあがってくるんです」。

柳川の作る服は、単なる美しい服ではない。どこかエクストリームなデザインで時として前衛的で攻め姿勢のものだ。しかし、それが伝統的で丁寧な服づくりと高い技術に裏付けられているからこそ、優雅な大人服に仕上がっているのだろう。

2017-08秋冬コレクションは、ドイツの建築や音楽、アートからインスピレーションを得た。色(ドイツ国旗の赤・黄・黒をイメージ)、シルエット、ディテールにドイツの構築的なムードが漂っている。ダブルブレストのジャケット、腕のサイドをレースアップしたブラウンのジャケット、袴のようなワイドパンツなどどれをとっても強く挑むような美しさを放っている。「昔から、ドイツのものが好きだったんです。家具や文房も、自然に選んでいるものがドイツものばかり。ベルリンやミュンヘンにもよく行ったけれど、その都会感と自然のバランスが好きなんです。昔もバウハウスをショーのテーマにしたことがありますが、テーラードの構築感は、ドイツの硬質的な雰囲気に似ているところがある気がします」。

Aneeth Arora

冷たい都会感、シャープなモダニズム、そんな力強さが打ち出されたコレクションは、素材もまた魅力的だ。メルトンのダッフルコートは、野暮ったい印象に仕上がりがちなメルトン素材を、ハルト加工というハリを出す加工を加えて構築的なシルエットを形成した。コートに付けられた水牛のトグルは、角を原型のままで使った巨大ドグルだ。ショーのファーストルックを飾ったグレンチェックのスーツは、チェビオットというイギリス産の羊毛を使用している。高山に生息する羊のため、毛にしっかりとしたハリがある。通常はツイードに使用される原料を、梳毛引きのオリジナル糸を作成してスーツ地に落とし込んだ。
「生地は生き物です。国の気候によっても違うし、湿度によっても変化します。そこが面白いし、こだわりがいがある」。

柳川の唯一の趣味は、アート鑑賞だという。それも、最小限に切り詰めて無駄を削ぎ落した芸術、ミニマルアート。「ドナルド・ジャド、ダン・フレイヴィンなどが好き。そういう視覚的なものからインスピレーションを得る事が多いです」と、好きなアートもシャープだ。

「特別な感覚のものを作って行きたい。普通で上質なものはほかにもあるので特別なものを作りたい。どこか特徴的で、それを着ていることによって人とは違う感覚になれるもの。高揚感や面白さを感じられるような服を目指しています。美しさ、かっこよさはエッジな感じでありたい。生涯かけてチャレンジしていきたいです」。

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