ダブルの復活

ダブルのスーツの人気が復活。しかしその原点の徹底したフォーマルなスタイルはよりリラックスしたものに。ミッチェル・オークリー・スミスによるリポート。

メンズスタイル

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ダブルのスーツは衣服の歴史に深く関わっている。ダブルのスーツは海軍のジャケットに起源を持ち、ケント公(6つのジャケットボタンの下の2つのボタンを掛ける彼のスタイルは「ケント “Kent”」と呼ばれるようになった)によって広まり、広くシャープな肩と生地の広がりが力を連想させることから、その後1940年代のアメリカのギャング文化や1980年代のウォールストリートの銀行家たちと関連付けられた。重なる前身頃と並列のボタンが特徴のダブルのスーツ、あるいはピーコートやトレンチコートの人気は過去1世紀に衰え去ってしまったが、近年また、現代のデザイナー達のクラシックなファッションの再解釈によってメンズウェアの前線に復活を遂げている。

ダブルのスーツは男性のワードローブの基本としての揺るぎない魅力を発揮し、長年愛され続けている。ロンドンではリチャード・ジェームスが海軍服の歴史、特に1930年代のロンドンの波止場の労働者のワードローブに着目。グレーのカラーパレット、がっちりしたケーブルニットやしっかりしたスーツやアウターなどの伝統的に男性的で、幾分インダストリアルなテイストと、ジェームスの得意とするファインテーラリングを融合したコレクションを発表している。このコレクションの大半を占めたダブルのスーツは、ウェストで短くクロップされ、肩のカットはシャープ、着用者に大胆なシルエットを与える。

Richard James

スイスのブランド、BALLYもまた、過去に惹かれ、フォトグラファー、ピーター・シュレシンジャーの著書、”Checkered Past ” にインスピレーションを得て歴史上のベストドレッサーのワードローブから出てきたばかりかのようなクールなアイテムのコレクションを作り上げた。このコレクションにはギンガムチェックのダブルのウールスーツ(白黒やブロンズと黒など)、明るいマスタード色のウルトラファインなロールネックのニット、そしてウールのニットコートのシリーズが含まれている。ウールの柔らかさがコートに今シーズンのコレクションのリラックスした特徴に合った、ドレープ感のあるローブのようなクオリティーを与えている。

Bally

ハーディーエイミスのヘッドデザイナー、ダレン・バロウクリフはテーラリングにおけるリラックス感を追及している。柔らかいグレーのウールのダブルスーツにパッチポケットつけ、カーゴパンツにジャケットを合わせることで、伝統的にフォーマルなアウトフィットにカジュアルなスタイルを演出。エルメネジルド・ ゼニアはステファノ・ピラーティの指示のもと、スーツに同様のアプローチを取り入れた。ラインと厳格なフォーマルスタイルを崩し、若い顧客にも受け入れられるものに。ミラノで行われたブランドプレゼンテーションでは、ダブルのコートやプリーツがフロントに入ったパンツなどのウールのスーツやアウターは、ゆったりしたカットで伝統的なアイテムにボリュームが加えられ、刺繍や宝石のデコレーションが施されていた。ピラーティが言うように、それは「大胆で恐れを知らないスタイルによる非常に洗練されたワードローブ」なのだ。

Hardy Amies

ボッテガ・ヴェネタのクリエイティブ・ディレクター、トーマス・マイヤーは説明する。「全てがエレガントで上品、長く細身のラインが作りたかったのです。」くるぶしからのフレアカットパンツにウェストで締められラペルから広がるダブルのブレザー。マイヤーは確かに男性の姿を引き伸ばすことに成功した。このコレクションで際立ったのは、スーツのディコンストラクション(解体)。しかしそこにはこのデザイナーが以前行ったようなスポーツウェアの要素は取り入れられていない。その代わりに、タートルネックのセーターやシェルトップのようなウールニットがシャツの代わりとなり、ベルトのついたオーバーがブレザーに代わり、スタイルの最後の仕上げのニットのウールスカーフが後ろへなびき、スタイリングにさりげなさを加えている。「この男性は自分のスタイルを知っているのです」マイヤーは言う。

Bottega Veneta

しかし、どう着こなせばいいのだろうか?スーツのルールは緩くなったものの(今日の最もスタイリッシュな男性たちはワードローブのスーツを組み合わせ、ユニークなアンサンブルを演出している)、完全に取り払われたわけではない。ダブルのスーツを着用するときには、たっぷりした生地の長さが体型を覆い隠さないように気を付けること。もし身長がそれほど高くないのであれば、ラペルのラインを延ばしてジャケットの下の胴体をより見せることで、背丈の印象を変えることができる。そうする時には、バランスを崩さないだけでなく、ウェストをよりスリムに見せるために、スーツが身体の自然なラインにフィットしていることが肝心。一番大切なのは、ダブルのスーツはフレッド・アステア、ケント公、パトリック・ベイトマンなどファション史上もっともアイコニックな男性たちが着用していたということを知ること。お洒落をすることが期待されるだけでなく、歓迎されるということだ。

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