全てがインスピレーション

音楽、スポーツ、旅行、ポール・スミスにとっては全てがインスピレーション。ミッチェル・オークリー・スミスによるリポート。

メンズスタイル

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ポール・スミスの名前を挙げれば、誰もが前向きな反応を示すはず。40年以上にわたるキャリア、世界中に1700の販売拠点を持ち、自身以外の話題のブランドとの定期的なコラボレーションを行い、今日までの軌跡をたどるエキシビジョン を世界各地で開催する。、大英帝国勲章(『CBE』)を受章したこの英国のファッションデザイナーは、生存する最も偉大なクリエイティブ・アーティストの1人であり、ビジネスマンだ。しかし興味深いことに、ポール・スミスはもっとも後進の指導に熱心なデザイナーの1人でもある。定期的に学生たちをロンドンのデザインスタジオ兼自宅に招き、将来有望なデザイナーのメンタリングを行っているのだ。その中にはインターナショナル・ウールマーク・プライズ勝者であるアギ&サムも含まれる。

サー・ポール・スミス ジェームズ・ムーニー撮影

「それは本当に、お返しをする、ということなのです」と、このチャーミングなデザイナーは語る。「私はただ、人が大人になって少しのお金を持つようになったら、それを還元すべきだと思うのです。若い人は驚くほどインスピレーションを与えてくれます。彼らに関わるのはとても楽しいですよ。」このようなサー・ポール・スミスの考え方は彼のつつましい成り立ちに根差している。1970年にノッティンガムの3平方メートルの店に立ち上げた自身のブランド。ロンドンのデザイン・ミュージアムで始まり、その後ベルギー、グラスゴーへと巡回したエキシビジョンでも再現されたこの店には、スミスのデザインにインスピレーションを与えた様々な思いや好奇心が詰まっている。ロンドン・メンズコレクションでの2016年秋冬コレクションはそのエキシビジョンの1バージョン である。

「それはインスピレーションをどこにでも見つける、ということなのです。」と、デザイナーは説明する。「『アルゼンチン・タンゴがどうカラフルな新しいバッグにインスピレーションを与えたんだろう?山積みのサイクリング・ジャージがなぜアクセサリーの新しいコレクションの模様になったんだろう?』などと質問しながらコレクションを見て欲しいのです。」

ポール・スミスが指摘するように、コレクションやコレクションをプレゼンテーションする方法の裏にはいつもストーリーがある。2015年の秋、スミスは「" A SUIT TO TRAVEL IN ”」というタイトル通り旅行に適したスーツを紹介する野心的なパフォーマンス・ベースのプレゼンテーションを行った。回復が早く、しわになりにくく、撥水加工を施したメリノウール生地で構成されたプレゼンテーションは、男子体操オリンピックメダリスト、マックス・ウィットロックを起用。ウィットロックは鮮やかな体操技でスーツが伸縮し、動き、肉体の限界に応える様を披露し、スーツの多様性を示した。高い人気を得たこのスーツは今やポール・スミスの通常のシーズナル・ コレクションの一部となっている。そのスタイルとカラー・パレットは拡大し続け、今ではイブニング・ディナー・スーツとブルーのウィンドーペーン・チェックのツーピースも作られている。

「トラベルスーツの良いところは、それが完全に正直なもの』だからです。というのは、僕自身、毎週飛行機に乗っています。」スミスは説明する。「このトラベルスーツは市場への売り込みのために作られたのではなく、私が個人的に必要だったものなのです。そして、実際に本当に役立っているんですよ。」当然最も重要なことは、トラベルスーツがメリノウールを使用しているということ。以前なら生地に伸縮性を与えるために使用されていたであろう化学繊維は、技術の進歩のお蔭でスミスの旅行用スーツには使用されていない。

ポール・スミスはトラベルスーツでのみウールを使用している訳ではない。彼のメンズ、ウィメンズ両コレクションで大きな割合を占めるニットウェアやアウターでも使用し、さらに2014年のサイクリング・ブランド、Raphaとのスペシャル・コラボレーションでもメリノウールが主要材料として使用している。「エドモンド・ヒラリーがウールを着用してエベレストに登ったことを考えれば、ウールを将来的にアウトドアでの活動のために使用しようとすることは理に適っている。私もサイクリング愛好家なんですが、ウールは防風防水性で吸放湿機能があり、耐紫外線に優れているので、サイクリングのような活動にとって完璧なのです。本当に完璧なんです。」

現在世界中で販売されているポール・スミスの2016年春夏コレクションは、身体にフィットし、ゆったりしたイテレーションで作られた伝統的なウールのテーラリングに、イノベーティブな切り口を与えている。例えばダブルのウールのブレザーはボディから広く切られ、太ももの真ん中まで延びている。一方パンツはスリムから極端にワイドレッグなものまで様々。スミスにとって音楽は驚くほど豊富なインスピレーションの源。彼がデザインするシルエットや大胆な明るい色(赤、黄色、ロイヤル・ブルーがポイント)に、1960年代のモッズから1980年代のパンク・ロッカーまで、過去の音楽のレジェンドを見ることができる。

ポール・スミスのブランドでは広範に豊かな音楽の影響を見つけられる。何かを予知するかのように、デヴィッド・ボウイの死のたった数日前にボウイの新しいアルバム、『ブラックスター(“Blackstar”) 』を記念してポール・スミスはボウイとコラボしてTシャツのシリーズを発表している。(サー・ポール・スミスはその後パリで行われたメンズウェアのショーでこの伝説的なミュージシャンの音楽をサンドトラックに使用し、ボウイとの友情に敬意を示した。)これまでにもスミスがレッドツェッペリンとスカーフのシリーズをコラボしたり、ロンドンと東京のポール・スミスショップでジミー・ページが演奏したり、メルボルンでアルバート・ソルトがパフォーマンスを行ったりしている。『新しいバンドから古いバンドまで、僕たちはたくさんのバンドと親しいのです。人々を音楽と結びつけるのは素晴らしいことだし、だからこのようなスペシャルなことを時々やるんですよ』とデザイナーは説明する。

日本:日本には250以上のポール・スミスショップがあります。詳細はpaulsmith.co.ukをご覧ください。

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