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新しいアクティブウェア・ブランド、トラックスミス (Tracksmith) は製品にメリノウールを使用することで差別化を行い、ランニングを特別な体験にしようとしている。ミッチェル・オークリー・スミスによるリポート。

スポーツ

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「時間の経過と共に、ランニング用品ブランドはスポーツやスポーツ文化との接点を失っていきました。」とマット・テイラーは語っている。「ランニング用品のブランドは健康とウェルネス全般を推進するメッセージに力を入れ、それによってスポーツに大きな空洞を残してしまいました。私達はその優美さ、競争心、情熱を持ったコミュニティー、不変のスタイルなど、運動に関する全てのことを愛しているのです。」その反応としてテイラーは2015年半ばにルーク・シェイベラーと、トラックスミスというブランド名の通りランニングを中心とする高機能ウェアブランドをボストンに立ち上げる。「ランニングという分野はとても同質化してしまいました。ロゴを取ってしまえば全ての物が同じに見え、感じられるのです。私はランニングの歴史と文化など、偶然ここニューイングランドに深く根差しているランニング独自の要素を真に紹介するブランドの必要を感じたのです。」

テイラーはこの事業においてユニークな存在である。イェール大学で心理学と生物学を学びながらクロスカントリーとトラック競技で競走し、青年期を通してランナーであったテイラーにとって、ランニングは彼が大学で優れていたものであった。ランニングは世界で最も純粋で、歴史のあるスポーツであるとテイラーは信じている。「より速く走ろうとすることは、非常に辛いことであると同時に、非常にやりがいがあります。私はランニングが与えてくれる『後からくる喜び』を愛するのです。このような喜びは他のスポーツから得ることはほとんどできません。」それは多くの従業員が現役のアスリートであり、しばしばボストンマラソンの中間点でもあるマサチューセッツ州ウェルズリーの森の中でのランチタイムのジョギング中に会議が行われるという、トラックスミスのビジネスモデルにテイラーが取り込んでいるものでもある。

しかし、何が特にランニングに合わせて作られたトラックスミスのアクティブウェアを特別なものにしているのだろうか?重要なのは、このビジネスの故郷にランニングの歴史的な文化があるということだ。ボストンは年に一度開催される有名なマラソンのためにアメリカのランニング文化の紛れもない中心であり、アメリカ中から(そして世界中から)毎年ランナー達を引きつけている。「それは単に地域に溶け込んでいるということなのです。」と、テイラーは語る。テイラーはこの文化をクラシックなアメリカのメンズスポーツウェア、特にアイビー・リーグの大学を連想させるカレッジスタイルからヒントを得たトラックスミスのデザインに注入した。それは例えば、主にディープネイビー、フォレストグリーン、濃いマルーンなどからなるカラーパレットや、クルーネックのTシャツのようなスタイルからも明らかだ。「これらのアイテムのシンプルさには何か説得力があるのです。」

しかしこの歴史への敬意はイノベーションを否定するものではない。技術をトラックスミスの製品開発の中心とし、テイラーは他に例を見ないレベルの機能性を持つメリノウール・ブレンドの生地などを製品に起用している。「メリノは天然の高機能素材なのです。」テイラーは言う。「メリノは寒い時には暖かく、暑い時には涼しく保つだけでなく、湿気を非常にうまくコントロールしてくれます。」テイラーはメリノが本当に優れているのはその防臭効果だと指摘する。ブランド立ち上げに先立って、トラックスミスは明らかに洗濯が必要となる前に製品が何度着用されることができるかを調べるために、製品の徹底した検査を行った。「時には全く洗濯の必要を感じることがなかったのですよ。本当に信じられません。」と、テイラーは語っている。

自身のビジョンによって、テイラーはトラックスミス立ち上げのために民間投資から多額の資金を調達することに成功した。「投資家は2つのことに魅力を感じたのです。」テイラーは説明する。「1つは巨大でかつ成長を続ける世界のランニング市場です。ランニング用のショートパンツやシューズを持っていない人がいるでしょうか?そして2つ目は新興企業が既存の企業を追い出すという業界の歴史的なパターンです。」確かに世界の流れはトラックスミスの成功を導いているように見える。そしてテイラーは非常にシンプルながら、来年は素晴らしい製品を作ることでブランドの出発点を堅固にしていきたいと考えている。「ある日振り返ってみたときに、トラックスミスがランニングの認識を変えたと感じることができればいいと思います。」テイラーは言う。「私達の目的はランニングをもう一度重要なものにすることなのです。」

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